「妊活」という言葉が世の中で浸透し、妊娠、出産することに対して、積極的に取り組んでいこうとする動きがあります。産科医療の現場で多くの新しい命の誕生に立ち会ってきた、慶應義塾大学医学部教授の吉村泰典医師は、若いときから女性の体のこと、妊娠のこと、そして出産、育児に関して知ることが大事だと話します。「少子高齢化」の波、現代日本の妊娠事情についても、詳しく話をお聞きしました。
- 最近、「卵子老化」という言葉が広く知られるようになり、衝撃を受けた女性もたくさんいました。先生はこの現実を見て、どういう感想をお持ちですか?
20代、30代の女性に妊娠について尋ねると、「45~55歳でも妊娠できると思う」と答える人が30%以上いるんですね。実は、妊孕能(=にんようのう、生殖能力)のピークは23歳ごろだと言われています。閉経するまで妊娠できると思っている人がとても多いのですが、それは正しい理解ではないと言えます。50代でも子どもを産む人もいますが、たいていの場合、卵子提供を受けて妊娠し、出産しているんです。“卵子提供を受けて”という部分が抜けてしまって理解しているんですね。
ヨーロッパ諸国では、月経が始まると母親が娘を産婦人科に連れていき、月経の仕組みや妊娠についてのレクチャーを受けさせます。けれど、日本ではそういったことはなく、お赤飯を炊いてお祝いするだけ(笑)。EU諸国やアメリカやオーストラリアが加盟するOECD(経済協力開発機構)の国でも、妊娠に関する教育をしないのは日本だけと言っても過言ではありません。避妊経口薬の「ピル」や「HPV」(ヒトパピローマウィルス)ワクチンの問題も同じですが、教育がなされていない現実があります。