ママ・パパのもう一つの悩みは、赤ちゃんの未熟でデリケートなお肌が、冬の乾いた空気でカサカサに乾燥してしまうこと。乾燥肌に有効な対策はどういったものでしょう。
「とにかく徹底した保湿です。乾燥肌や湿疹に悩んで外来に来られる赤ちゃんたちのほとんどは保湿が足りていません。頭からつま先まで体中に保湿クリームなどをベタベタと、1日何回も塗ることが必要です。市販の赤ちゃん用のローションやクリーム、ワセリンで十分。医師が処方する保湿剤である必要はありません。また、高級なオーガニック商品にこだわってもいいのですが、大切なのはたっぷり塗るということ。こだわって高価なものを買うと、つい少しずつ使ってしまうこともあるので、惜しげなく使えるものを選んでください。ワセリンは石油が原料だからと気にするママ・パパもいますが、問題ありませんので、ぜひ使ってください」(阪下先生)
こまめな保湿を忘れないために、朝起きた時、授乳やお風呂の後、お散歩から帰った時など、保湿のタイミングを決めて続けたいものですね。先生がすすめてくださったワセリンの安全性については、厚生労働省の資料(※1)にも掲載されています。
肌がカサカサするくらい別に気にしなくてもいいのでは……と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、乾燥が原因で肌の状態が悪くなると食物アレルギーのリスクが高まる可能性もあるといいます。
「空気中にはアレルギーのもとになる抗原が浮遊しているのですが、その中には食物抗原もあります。乾燥して皮膚のバリアがこわれた肌から食物抗原が体内に入ると、食物アレルギーの原因になることが、最近の研究(※2)で分かってきました。だから、乾燥肌を防ぎ、肌のバリアを守ることは、将来的な食物アレルギーを抑えることにも有効と考えられています」(阪下先生)
食物アレルギーの予防にもなるという保湿。特に乾燥が激しいお肌のお子さんなら、赤ちゃんを卒業してからも、ずっと続けておくのがよいとのことです。
「少し大きくなると嫌がるお子さんもいるでしょうが、自分でちゃんと塗れるようになる10歳ぐらいまでは、捕まえてでもクリームを塗ってあげて欲しい」と阪下先生は言います。それぐらい保湿は大切なことなのですね。
「ちなみに乾燥肌がひどくなって、湿疹やかぶれのような症状になると、ステロイド外用薬を処方されることもあります。ステロイドは湿疹やかぶれを治すお薬ですが、肌の乾燥を防ぐものではありません。ステロイド外用薬で一旦は治ったようでも、乾燥肌がまた悪くなると、また湿疹ができてしまいます。保湿を徹底して、乾燥肌を治しましょう。また、乾燥肌対策で覚えておいていただきたいのは、手洗いの後の保湿。日常の手洗いはとても大切な習慣ですが、石鹸やアルコールで手の皮脂が減りすぎてしまうこともあります。手洗いの後は保湿も忘れないでくださいね」(阪下先生)
わが子がアトピーやアレルギーによるトラブルで将来悩むことがないように、新生児からの徹底したスキンケアを心がけたいですね。
冬だからと言って、赤ちゃんが必ず感染症にかかるわけではありません。でも、家族みんなで予防法を実行すれば、赤ちゃんが感染症にかかりにくくなるだけでなく、みんなが健康でいられそうです。乾燥肌も、こまめな保湿をするだけで防げるものなので、是非実践してみてください。
赤ちゃんとはじめてすごす冬。親子ともども健康に気をつけて、楽しくすごせるといいですね。
- <参考資料>
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※1第5回厚生科学審議会 医薬品販売制度改正検討部会 医薬品のリスク程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会議事録
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0117-9.html -
※2Lack G. Epidemiologic risks for food allergy. J Allergy Clin Immunol. 2008;121:1331.
Brough HA, et al. Distribution of peanut protein in the home environment. J Allergy Clin Immunol. 2013;132:623-9.
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※1第5回厚生科学審議会 医薬品販売制度改正検討部会 医薬品のリスク程度の評価と情報提供の内容等に関する専門委員会議事録