「妊活」で目指す理想のボディは「体脂肪&筋肉」と「栄養状態」がポイント!
細川モモさんインタビュー(前編)

ミキハウス編集部

妊活に必要な栄養素は葉酸だけではありません

- 筋肉と体脂肪のほかに、「妊活」のために考えなくてはいけないことは何でしょうか?

大事なポイントの二つ目は、栄養をしっかりとるということです。日本女性に「妊娠のために必要な栄養素は何ですか」と聞くと、ほとんどの人は葉酸と答えるでしょう。これは、日本のドクターに聞いても同じ答えであることが多いと思います。けれど、アメリカの場合は葉酸という答えは出ません。何が必要な栄養素かと聞かれたら、「すべて」というはずです。実際に米国では、妊娠すると妊婦用のサプリメントが処方されることが一般的ですが、これには葉酸以外にDHAや鉄、ビタミンD3などが含まれています。

人の体は60~70%が水分で、20%がたんぱく質などのアミノ酸でできています。筋肉、内臓、血管、血液、爪、髪や皮膚のコラーゲンなど多くのものを構成しています。20のアミノ酸のうち、9つを「必須アミノ酸」と呼んでいますが、たとえば、筋肉の材料となるのはその中の3つでバリン、ロイシン、イソロイシン。これらのアミノ酸を合わせて「BCAA」と呼びます。これらは、人間の体の中で作り出すことができないので、食事でとらなければ筋肉を作りつづけることはできません。運動をすれば筋肉がつくと思われているんですけど、運動と合わせてしっかり食べて、BCAAを摂取すること。これが筋肉をつける条件です。

そして、この必須アミノ酸というのがちょっと曲者で。じゃあ子どもを産もうと思ったら、BCAAだけをとっていればいいのかというとそうではないんですね。実は、9つの必須アミノ酸すべてが、“100点満点”で揃わないと力を発揮できないという特徴を持っているんです。たとえば、9種類のアミノ酸のうち、8種類が100点満点揃っていても、1種類のアミノ酸が不足しているなら、たんぱく質としては不完全です。米や小麦は2~3種類のアミノ酸が不足している食品。つまり、ご飯や、小麦でできているパン、麺だけでは、明日に筋肉や肌を十分に作ることはできません。必須アミノ酸をすべて揃えることが、健康な体を作るコツです。

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アミノ酸全9種を含んでいる食品を「アミノ酸スコア100」として、数値化しているので覚えておくといいですよ。スコア100の代表的なものとしては、肉、卵、魚、大豆ですね。これらを必要量食べておけば、筋肉は作られるということになります。また、食べ合わせも大事で、実は、米は61点なんですが、米の足りないアミノ酸であるリジンを補うには、リジンが豊富な大豆製品を食べればいいんです。ご飯に納豆や豆腐のお味噌汁を合わせれば、100点になるということです。日本人は、普段の食生活の中で自然とアミノ酸をしっかり摂取できるような文化を築いてきているんですね。

パンやパスタ、うどんなどの麺類は小麦でできていますが、小麦のアミノ酸スコアは37点。実は体を作る材料としては不完全なたんぱく質といえます。これも、食べ合わせでスコアを100点にすれば解決します。たとえば、朝食がトーストだったら、卵料理やツナ、チーズをプラスしたり、昼食のパスタも魚介類や肉類が入っているものを選んだりすると満点のアミノ酸が摂取できます。

先ほど話に出た葉酸ですが、なぜ妊娠前に必要な栄養素として認知度が高いかというと、胎児の細胞分裂や成長、DNAの形成に障害が出て、先天的な疾患が出ることを防ぐからです。そのため、葉酸は妊娠前からの摂取が大切になるので、厚生労働省でも妊娠1ヶ月前からの摂取を推奨しています。

将来の妊娠を考え、葉酸をとる人に気をつけてほしいのが、妊娠初期~5ヶ月頃までは葉酸の働きを守るためにカテキンが多く含まれる食品は避けたほうがよいという見解が出ていること。また、妊活中の女性は、葉酸はカテキンに弱いということを知っておくことも大事です。さらに、太りたくないという理由で妊娠中にカテキンやカフェインが高濃度で含まれるダイエット飲料を愛飲することはおすすめできません。妊娠初期は煎茶や番茶よりも、カテキン含有量の少ないほうじ茶などが適しているといえそうです。

葉酸以外の栄養素にもきちんと目を向けて、日本人が長い間親しんできた和食をとることをおすすめします。体の調子を整えようとするとき、今の女性たちは特定の食材や栄養素を抜く、食べないという方向にいきがちです。妊活中は特に質のよい食事を心がけ、さまざまな栄養素を補給し、新しい命を宿すための体づくりを目指してください。

【プロフィール】

細川モモ(ほそかわ・もも)
予防医療コンサルタント、栄養コンサルタント
2011~2013 ミス・ユニバ−ス・ジャパン オフィシャルトレーナー
両親の末期がん闘病がきっかけで予防医療の道へ進み、欧米の先進的な取り組みや栄養学について7年以上現地で学ぶ。東京とニューヨークに支部を構える予防医療プロジェクト「ラブテリ 東京&NY」を発足、主宰者に。国内外の医療専門家や大学・企業とともに研究・論文発表等を行う。2012年には世界規模の「卵巣年齢研究」に着手し、NHKテレビで取り上げられる。著書『タニタとつくる美人の習慣』(講談社)、『BABY BOOK』(ラブテリ)。

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