医師に聞く、乗り物酔いの原因と対策
そして「乗り物酔いに強い子ども」に育てる方法

2019.08.01

ミキハウス編集部

乗り物酔いを防止するのは、十分な睡眠と日頃の遊び体験

3

基本的には乗り物酔いと無縁の赤ちゃん。しかし早い場合、2歳ぐらいから乗り物酔いの症状が現れる子もいます。小さな子どもが乗り物酔いに苦しまないために、できることについて橋本先生はこう言います。

「まずは十分な睡眠ですよね。夜更かしをして体のリズムが乱れていると、自律神経も乱れやすくなり、感覚混乱による症状が出やすくなるので、旅行の前はしっかり睡眠を取るといいでしょう。また、空腹や満腹もNGです。出発直前にお腹いっぱい食べたり飲んだりすることは避けたほうがいいでしょう。理想的なのはお腹がすかない程度に、適度に食べておくこと。移動中にお腹がすいた場合も、(車酔いの心配があるなら)たくさん食べさせるのではなく、お腹にもたれない軽い食べ物かキャンディなどを舐めさせるのもいいですね。軽く食べ物を食べることにより胃の空腹感を抑えて自律神経を整えるのに役立つんですよ」(橋本先生)

昔から乗り物酔いをしやすい子は、遠足のバスは一番前に乗って前の景色を見ておきなさいとか言われるものでしたが、それは医学的にも正しいとのこと。

「乗り物酔いを起こす大きな原因は視覚の乱れによるもの。近くで揺れるものを見続けると酔いやすくなるため、遠くの景色を見ておきましょう、というのは理に適っています。そういう意味では乗り物内での読書やテレビ、タブレットなどの使用は乗り物酔いを誘発する可能性は高い。最近は車の中でタブレットやスマホ、もしくは備え付けのモニターなどで動画コンテンツを見ながら移動するお子さんも多いかと思いますが、もし車酔いしやすいお子さんであれば、避けておいた方がよいでしょう」(橋本先生)

もちろん幼児向けの酔止めの薬も市販されています。わが子が乗り物酔いかもと気になるなら、お出かけの前にかかりつけのお医者さまに相談してみてもいいかも知れません。

最後に、橋本先生から乗り物酔いに強くなるための“体づくり”についてお伺いしました。

「ポイントは脳が感覚混乱を起きにくくすること。そのために、日頃の心がけとして、体を動かして遊ぶ機会をたくさん作ることが大事だと言えます。赤ちゃんが自分で体を動かせるようになったら、日常生活の中でいろいろな体の動きを経験させてください。その動きの中で平衡感覚が養われ、乗り物酔いをしにくくなります。また人見知りなどで不安感が強く緊張気味の場合も、自律神経が乱れやすくなります。外に出て遊ぶということは、同年代の友達や大人たちとのふれあいも増えますから、精神的な効果も期待できると言えるのではないでしょうか」(橋本先生)

夏のお出かけで決して忘れてはいけないのは、新陳代謝が盛んな赤ちゃんや子どもは熱中症にかかりやすいということ。外出先でのこまめな水分補給はもちろん、車を利用する際は「ほんの数分でもベビーシートやチャイルドシートに眠っているわが子を置いたままエンジンを切って車を離れるのは、命に関わることもあります」と橋本先生。

赤ちゃんと一緒に迎える夏休みは、家族にとっての“はじめて”の経験がたくさん詰まった楽しい時間になることでしょう。成長につれて症状が現れがちな乗り物酔いについての対策を覚えておけば、この先の旅行でも移動の時間を快適にすごすことができそうですよ。

 

5

【プロフィール】
橋本 興人(はしもと おきと)
神戸大学医学部医学科卒 六甲アイランド甲南病院、兵庫県立こども病院を経て、2017年より医療法人社団ナイズが運営するキャップスクリニック小児科勤務。また、国立精神・神経医療研究センターにて自律神経系の研究に取り組む。この夏新規開院したキャップスクリニック武蔵小杉(https://www.caps-clinic.jp/musashikosugi)院長に就任。医療法人社団ナイズは現在都内を中心に8つのクリニックを展開しており、キャップスクリニック武蔵小杉は、働くママ・パパが気軽に頼れるかかりつけ医をめざして、1年365日午前9時から午後9時(午後1~3時までは昼休み)までを診療時間としている。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

あなたへのおすすめ

おすすめの記事を見る

記事を探す

カテゴリから探す

キーワードから探す

妊娠期/月齢・年齢から探す