日本人女性が発症するがんの中でも最も多いといわれる乳がん。仕事に育児、家事も毎日頑張っているママは特に気をつけたい病気です。今回は「乳がんの基礎知識」として、発症の原因や検診の重要性について、がん・感染症センター都立駒込病院乳腺外科の医師・才田千晶先生に伺いました。
鹿児島大学医学部卒。がん・感染症センター東京都立駒込病院乳腺外科勤務 。外科専門医、乳腺認定医、マンモグラフィー読影認定医、遺伝性腫瘍専門医。今年7月に第1子を出産し、現在育休中で、新米ママとして奮闘する日々を送っている。「妊娠・出産を経験して、ママたちのがんばりや家族を思う気持ちを自分事として理解できるようになりました。復帰したら今まで以上に患者さんの気持ちに寄り添える医師を目指します!」
乳がんを発症する女性は年間9万人もいます
担当編集I(以下、I):まずは乳がんとはどのような病気なのか教えていただけますでしょうか。
才田先生:乳がんは乳房の乳腺組織に悪性の腫瘍ができる病気です。乳房は母乳を作る乳腺とそれを包む脂肪組織で形成されていて、乳腺は乳頭から放射線状に伸びる15~20の乳腺葉に分かれています。乳腺葉は乳管と乳腺小葉(にゅうせんしょうよう)で成り立っていて、乳がんの多くは乳管に発生し、まれに乳腺小葉にもできるといわれています。
I:特に30代、40代から発症する方が多いそうですね。
才田先生:はい。日本のデータでは、30代の後半ぐらいから増えはじめ、40代後半でピークを迎えて、50代でちょっと少なくなるのですが、60歳ぐらいでまた増加するという傾向が見られます(※1)。米国では年齢を重ねるごとに多くなっていく傾向があり、だいたい40歳から徐々に増加していく病気なんですよね。ちなみにどうして日本と米国が違う曲線を描くのかについては、食生活等の生活習慣が一因ではないかと推測されているものの、はっきりとはわかっていません。
I:発症件数も非常に増えているといわれていますね。
才田先生:はい。こちらのグラフをごらんください。
I:この20年間で、特に30代後半から大幅に増えているのが一目瞭然ですね。
才田先生:新しく乳がんと診断される “り患者数”は、1995年には1万9千人に満たなかったのに、2018年には年間約9万人を超えていて、未だに増加傾向は続いています。子育て中のママ世代はもちろん、これから妊娠・出産を考えている女性も気をつけなければいけない病気です。
I:女性のがんの中でも最も多いとのことですが、日本の女性全体でどれくらいの人がかかっているのでしょうか。
才田先生:乳がんの発症率は約10%です。つまり女性の約1割が乳がんになっているということで、このリスクは日本でも欧米の数字にだんだん近づいています。ただ死亡数で見るとがんの中では5位ですから、かかる数は多くても、他のがんに比べると比較的治療しやすいというのも乳がんの特徴です。