I:自治体によっては40歳以上の女性を対象に乳がん検診の補助がありますね。
才田先生:40歳から乳がんの発症リスクが高くなるのは明らかですから、40歳になったら検診をきちんと受けていただきたいと思います。厚生労働省はマンモグラフィー検査を2年に1回受けることを推奨していています。またエコー検査による乳がん検診も導入している医療機関もあります。マンモグラフィーとエコー検査では見つかりやすい腫瘍のタイプが違いますから、このふたつを組み合わせれば、より精度のいい検査になると思います。
I:先ほどのお話では日本の乳がん検診の受診率は50%以下なんですよね。
才田先生:そうなんです。職場や自治体で行われる時にもっと積極的に受診していただきたいと思います。見つかった時の進行度にもよるのですが、乳がんの5年生存率はおおよそ92%もあります。早く発見して早く治療を始めることで完治の確率も高くなるわけですから、検診は大きなチャンスと言えるんですよね。
I:40歳以上の女性であれば検診の機会がありそうですが、30代でも乳がんの発症は増えているんですよね。自費で検診できる医療機関もあるそうですが、それ以外に若い女性たちが少しでも早く乳がんに気づけるようにするにはどうしたらいいでしょうか。
才田先生:やはりセルフチェックではないでしょうか。乳がんの初期症状のほとんどは胸にできるしこりです。検診を受けていない20代、30代で発症する人の8~9割がご自分でしこりを自覚して受診なさるようです。しこりは自分で見つけることができるので、自分自身の乳房の形や感触を知っていれば、異常に気づけることもあります。
才田先生:セルフチェックの時に注意したいのは、乳房を固定しようとしてつかまないことです。つかんで触ると乳腺を感じるので触診が難しくなります。乳房全体を片手の指のはらでゆっくり押すように触るだけでしこりがあれば分かることが多いんです。
I:あまり強く押したりしなくてもいいんですね。しこりというのは具体的にはどんな触感なんでしょうか?
才田先生:一般的には良性の乳房腫瘤は表面がツルッとしているので、触るとコロコロ転がるような感じで、可動性がいいと表現されています。それに対して悪性腫瘍はしっかり触ってもあまり動かない感じです。ただ触診は感覚的なものですから、何となくしこりかもと思うなら一度専門の医療機関を受診していただくのがいいでしょう。
I:「見てチェック」はいつもと違っていないかを目視で確かめればいいんですよね?
才田先生:腫瘍が大きくなってきたり、皮膚に近いところにあると、凹みや引きつれが起きることがありますから、そういった変化を見つけるつもりでご自分の乳房と向き合っていただければと思います。乳頭の位置や乳房の形がちょっと変わったことで見つかることもあるし、皮膚自体に炎症が起きたり、乳頭が凹んだりするのも要注意です。月経がある方は月経後4~7日を目安に、閉経後なら毎月日にちを決めて、月1回のセルフチェックを習慣にしていただきたいですね。小さな変化を見逃さず、早期に発見することでご自身の体と生活を守っていただきたいと思います。
「乳がんは比較的治療で治りやすい病気です」と才田先生。事実、5年生存率が約92%もあることはぜひ知ってもらいたいものです。とはいえ、早期発見のため日頃のセルフチェックはもちろんのこと、検診も定期的に行ってくださいね。
- <参考資料>
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※1最新がん統計(国立がん研究センター)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html -
※2How diet, nutrition and physical activity affect breast cancer risk(American Institute for Cancer Research )
https://www.wcrf.org/dietandcancer/breast-cancer -
※3男女別がん検診受診率の推移 (国立がん研究センター)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/screening_p01.html -
※4知っておきたいがん検診「諸外国のがん検診データ」(日本医師会HP)
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/foreigncountry/
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※1最新がん統計(国立がん研究センター)