I:ところで共感力というのは、子どもの社会でなければ育たないのでしょうか? それなら、ひとりっ子の場合はどうしたらいいのか、子どもが周囲にそんなにいない環境で子育てをしている人はどうなんだろうとか、いろいろ考えてしまいます。
高橋先生:それは杞憂だと思います。共感力は、最初にお父さん、お母さんと子どもの関係性の中で生まれてくるものです。愛着形成期に愛情や信頼を知り、イヤイヤ期に自律を覚えていく中で、互いに共感しあう経験を重ねて親子の絆が強くなっていくんです。
ですから、親子の共感性は何よりも強い。それは表面に現れなくても、意識の下にしっかり存在しています。例えば、迷いつつ何か行動を起こそうとする時などに「お父さんは褒めてくれるはずだ」とか「お母さんが知ったら悲しむよな」とか、想像してみたことはありませんでしたか? あったとしたら、それはお父さん、お母さんがあなたの中に内在化していた、つまり、今、そこにいなくても存在を実感できていたということ。幼少期に育んだ親子の共感性の結果なんです。
I:映画やドラマで、犯人に「おい、お母さんが悲しむぞ」とか呼びかけているシーンがありますが、それは親子の共感性に訴えかけているということなのかもしれませんね。
高橋先生:そうですね。親子関係さえしっかりとしていれば、健全な友だち関係を築いていくことは、それほど難しいことではないのでは。子どもの人格形成の根底にあるのは親と子の絆ですから。
I:共感力のある子に育てたいなら、まずはママ・パパがわが子と響き合う共感力を持つことですね!
高橋先生:そう思います。当たり前のことですが、子どもに対する親の影響力は絶大です。親御さんはそこをちゃんと意識して子どもに向き合っていただきたいです。
今、いじめに悩んでいる子どもさんがいたら、いじめる相手に「やめて」だけではなく、自分はなぜそれを言われたくないのか伝えてみるように教えてあげてはいかがでしょうか。自分の思いをまっすぐに相手に伝えることも、共感力を育むには大切なことではないかと思います。
「社会からいじめをなくすことはできないか」という冒頭の質問への答えにはなっていませんが、子どもたちの共感力が大きく育つことで、みんなが「こんなこと、自分は決して人にはしない」という気持ちを持つように。それにより、よりよい社会に少しは近づけるのではないでしょうか。