発達心理学の専門家に聞いた「赤ちゃんが人見知りをする理由」

2021.08.12

ミキハウス編集部

手がかかるなと感じたら、発達の階段を登ろうとしている時だと考えて

手がかかるなと感じたら、発達の階段を登ろうとしている時だと考えて

I:ところで人見知りは突然始まるのでしょうか? なにか兆候のようなものはないんでしょうか?

石井先生:大人から見ると、ある日突然かもしれませんね。赤ちゃんの成長って面白くて、ずっと同じように右肩上がりで成長するわけではなく、グンと伸びる爆発的な発達の時期となだらかな成長を繰り返しながら大きくなるんです。発達の階段の手前で足踏みしながら、1段ずつ登るというメージでしょうか。

例えば2歳頃のイヤイヤ期だって、言葉でのコミュニケーションができるようになるとスーッと卒業してしまう。手のかかる時期の後には必ず大きな変化や成長があるものですよ。

I:成長ってなんとなく右肩上がりのイメージがありました。でも大きな成長の前には停滞や葛藤もあるものなんですね。

石井先生:そう。次の階段を登る前に、“混乱”のようなものがある。人見知りやイヤイヤ期などがまさにその時期で、ママやパパにとっては苦労が多くなる。赤ちゃん自身も新しいことができるようになる前は混乱しているのだろうし、周りも今までと様子が違ってくるから、扱いづらいと感じたりしてね。

I: 確かにそれがわが子の成長に必要なことと知らないと、「これまでは扱いやすい子だったのに」という気持ちになりそう…。

石井先生:そこは是非、混乱の後に来るステップアップを信じて見守ってほしいですね。ハイハイとかズリバイを覚えた赤ちゃんは、いつの間にかものすごい速さで移動できるようになりますよね。それがつかまり立ちができるようになってヨチヨチと歩き始めると、ハイハイがいくら上手でも戻らないでしょう。なぜなら立って歩けるようになると見える世界がぜんぜん違ってくるから。それが成長するということなんですよね。

発達心理学の専門家に聞いた「赤ちゃんが人見知りをする理由」

I: 人見知りの時期に“後追い”がひどい子もいますよね。毎朝ママ・パパが会社に行こうとすると「行かないで!」と泣いて追いかけられて困ってしまうなんて話もよく聞きます。

石井先生:あれは子どもが、大好きなママ・パパが自分から離れていくことに漠然とした不安を感じるからで、人見知りと似たような理由で起きるんです。人見知りが終わる頃には、後追いも薄れていくでしょう。

少し脱線しますが、人見知りや後追いの解消は、言語の発達と関係があります。言葉を発し始めた頃は、ママ・パパの真似や目に入ったモノの名前を言うぐらいですが、徐々に言葉を使ったコミュニケーションに発展していきます。もっと進化すると、言葉で自分の行動をコントロールできるようになるんです。

I:言葉で行動をコントロールするとはどういうことでしょう?

石井先生:子どもがひとりで遊んでいるのを見ていると、よくひとりごとを言っているでしょう。あれはコミュニケーションのために身に着けた言葉(=外言語)を使って考えているからです。

大人は考えるときに音や文字で表さない言語(=内言語)を使うのですが、小さな子どもはまだ内言語が十分に発達していません。それでも成長するにつれて言葉で物事を考えられるようになり、今までは直感的なものだった不安や心配な気持ちを、徐々に言葉で整理して、自分の中で納得できるようになるんです。それが「言葉で行動をコントロールする」ということです。

I:ということは、言葉を理解するようになり、その上でママ・パパが言葉で不安を解消してあげるようにすれば、人見知りはなくなっていくのですか?

石井先生:そうですね。まだ小さいから理解できないだろうと考えずに、「今日はおばあちゃんが来るのよ」とか、「お客さまが来るけれど、怖くないよ」とあらかじめ説明しておくと、慣れない人に対する怖さを少しはコントロールできると思います。完璧に言葉を理解できなくても、情報があれば不安は小さくなるものです。つまり信頼している身近な人(=ママ・パパ)が、こう言ってるんだから、という情報が不安を解消してくれるというわけです。

I:なるほど。言語の理解力が高まることで、いろいろなことが整理できて、パニックを起こすこともなくなると。

石井先生:そう。感情をコントロールする上で、言葉を理解することはすごく重要です。親御さんは、慣れない人に会う時や知らない場所に行く前に、お子さんが不安や怖さを払拭できる情報を伝えるようにするといいでしょう。

人見知りをする時期の子どもは、大好きなママ・パパとの信頼関係をしっかりと認知して、そこに自分の居場所を見つけているんです。それが確かなものだと確信できれば、子どもは安心して次の段階に進めますよ。

次のページ 人見知りする子に無理強いは禁物。ゆっくりと親子の絆を紡いでいきましょう

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