食品添加物や食べ物の残留農薬に対して不安を感じている方は少なくありません。胎児への影響があるんじゃないか。発がん性のあるものが含まれているのでは。蓄積すればいずれ健康を害するのではないか――。どれも本当に気になる視点ですよね。
食品安全委員会では食品添加物や農薬について、さまざまな動物試験などの結果を用いて、あらゆる観点から健康への影響を評価し、一生涯毎日食べても人の健康に悪影響を及ぼさないと考えられる「許容一日摂取量」(ADI)などを決めています。厚生労働省や農林水産省が食品ごとの食品添加物の規格基準や、作物ごとの農薬の残留基準・使用基準を決めていますが、これらは「許容一日摂取量」が前提となっているのです。
つまり市場に出回っている野菜や食品は、添加物も農薬も基準内であり、それらを一生涯毎日食べても健康に悪影響はないとされているもの。また特定の海外産のものに対する不安の声もよく聞かれますが、輸入品も国産品と同じ食品添加物の規格基準や農薬の残留基準が適用されているため、輸入品だから危険といったこともありません。
なお、厚生労働省の調査では、食品添加物も残留農薬も、実際の食生活から口にしている量は、ADIの概ね1%未満。つまり私たち日本人は“非常に安全に配慮された基準”の、さらに100分の1未満しか化学物質を摂取していないのが実態なのです。
こうした綿密な調査と計算をもとに食品安全委員会は「妊婦・胎児・小児を含めて、通常の食生活をしている限り、健康に悪影響が出ることは考えられません」としています。その上で、体に悪影響があるかどうかは「量」の問題とも指摘。
「生物が身体に取り入れる物質は、食べものも、化学薬品も、そのほかどんなものも、量が多ければ身体に悪影響が出ますが、量が少なければ代謝されやすく、悪影響は出ません」(「お母さんになるあなたと周りの人たちへ−妊娠の前から気をつけたい食べ物のこと−」より)
健康面において大切なことは、栄養のバランスを考えていろいろなものを適量食べること。健康に悪影響が出るとは考えられない「ほぼないに等しいリスク」を恐れて、結果的に偏った食生活になることは避けた方がよいでしょう。