実はカフェインに対する感受性は個人差が大きいため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しく、カフェインの一日摂取許容量(ADI)は設定されていません。
目安は普段のコーヒーやお茶を飲む量。それがその人にとって適量とも言え、通常飲んでいる量であれば、カフェインの過剰摂取で有害な影響が現れることはまずありません。
なお、世界保健機構(WHO)は妊娠中、流産や新生児の低体重のリスクを減らすため、一日のカフェイン摂取量が300mgを超える妊婦のカフェイン摂取量を制限することを推奨しています。あくまで目安ですが、カフェイン300mgはだいたいコーヒーにして500ml。1杯200ml程度で換算すると、2.5杯となります。
続いてはアルコールです。
かつて妊娠期間中の飲酒は、少量であればさほど問題にすることはない、という説も存在していましたが、今やそれは否定されているようです。
妊娠中の飲酒は、胎児・乳児の低体重、小さな目・薄い唇などの特徴的な顔貌、中枢神経の障害(学習、記憶、コミュニケーションの障害など)を伴う先天異常(胎児性アルコール症候群)を起こす場合があります。
食品安全委員会も「飲酒による胎児の障害は、妊娠期間中のいつの飲酒でも起きる可能性があります。妊娠が分かってから授乳終了までは、アルコール飲料は避けましょう」としています。
つまり妊婦さんにとって、アルコール飲料の許容量=ボーダーラインはないと思っておいた方がよさそうです。お酒好きの女性にとっては辛いことかもしれませんが、しばらくお酒は控えてくださいね。
いかがでしたでしょうか。農薬や添加物については神経質になりすぎず、無添加や無農薬ではなくても気にせず、それよりも栄養のバランスを考えることが重要だということ。また葉酸は積極的に摂ることが推奨されているものの、摂りすぎはよくないこと。ビタミンAの過剰摂取には注意が必要で、鶏や豚のレバーを食べすぎないようにすること。カフェイン摂取量は「ゼロ」にする必要はないものの、妊娠中のカフェインの摂りすぎには注意すべきこと。アルコールは少量でも妊娠してから授乳期間中は控えておくべきこと――等々、基本的なスタンスについてまとめてきました。
続いて次回の記事では、同じく【妊娠と食】をテーマに魚の生食(お刺身)や水銀、大豆イソフラボンの摂りすぎ注意などについてまとめたいと思います。こちらも妊娠を考える女性やパートナーやご家族のみなさんに、ぜひ読んでいただきたい内容になっています。
参考
■内閣府食品安全委員会「お母さんになるあなたと周りの人たちへ」
http://www.fsc.go.jp/okaasan.html#jump02
※妊婦やその周りの方に向けて食生活上で注意していただきたいことをまとめたリーフレットを2009年より作成。本記事では、2022年8月30日に改訂した最新版を参考にいたしました。
■なお印刷用PDFはこちらからダウンロードできます。
http://www.fsc.go.jp/okaasan.data/okaasan20220830.pdf