ウイルス感染症と聞くと、冬に流行するインフルエンザを思い出すママ・パパもいるかも知れません。でも夏にもウイルスが原因で起きる感染症があります。
夏のウイルス感染症の代表的なものは、咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)、ヘルパンギーナ、手足口病です。これらの病気は一般的には、“夏風邪”と言われていますが、ウイルスによる感染症には抗生物質が効かず、インフルエンザのような治療薬もまだありません。「そんな病気が赤ちゃんにうつると大変」とママ・パパは心配になってしまいますね。
そこで東京都港区の愛育クリニック(旧愛育病院)の小児科部長・渋谷紀子医師にお話を伺いました。
“夏風邪”について知っておきたい「4つの基礎知識」
今回取り上げる咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)、ヘルパンギーナ、手足口病の3つの代表的な“夏風邪”はどれもウイルス性の感染症(※)です。まずは“夏風邪”について知っておきたい基礎的な知識を渋谷先生のお話をもとにまとめました。
【1.感染経路】
アデノウイルス感染症、ヘルパンギーナ、手足口病の感染経路はどれもだいたい同じで、感染した人のつばなどに含まれた病原体を吸い込んで感染する飛沫感染や、感染している人に触れたり、病原体がついたドアノブ、手すり、遊具などを触ることで感染する接触感染によって、人から人へ移ると言われています。また、ウイルスは便中にも排泄されるので、これに触れた手を介して感染することもあるようです。
【2.予防策】
“夏風邪”のウイルスにはアルコール消毒は効果がありませんから、手洗いをしっかりすることを心がけましょう。また、ハンカチやタオルの共有は避けましょう。
【3.治療】
ウイルス性の感染症は治療薬がないので、赤ちゃんがかかった場合は、安静にして、水分と栄養を補給しながら、体が回復するのを待ちます。
【4.解熱剤】
解熱剤は“必要に応じて使うもの”です。その理由は、「解熱剤で病気が早く治るのではなく、病気が治ることで熱は自然と下がる」ということ。また、解熱剤を使うと、解熱効果が切れて熱があがる時に不快感を訴える子もいるそうです。ただ、熱のためにぐっすり眠れない、水分が取れないなどのときは、一時的に解熱剤を使うメリットもあります。「40度の熱でもぐったりしていなければ必要のない場合もあるし、38度でも使った方がいいケースもあります。解熱剤は数字にとらわれないで、赤ちゃんの様子に合わせて使いましょう」と渋谷先生。解熱剤の使用は、医師の指導に従った方がいいようですね。