それではそれぞれの感染症を個別に解説していきます。
以前は、プール熱と呼ばれていた咽頭結膜熱(アデノウイルス感染症)は、アデノウイルスという病原体に感染することで発症します。アデノウイルスは感染力が強く、感染し発症すると、のどが腫れて高熱が出る、結膜炎を起こすなどの症状があります。
「胃腸炎の症状がみられることもありますが、熱が高いのが特徴で、39~40度ぐらいの高熱が4~5日ほども続きます。なお“プール熱”とも呼ばれることもありますが、最近のプールは水質管理がしっかりしているので、プールの水が原因で感染することはほとんどないと思います。やはり、飛沫感染や接触感染が多いとお考えください」(渋谷先生)
アデノウイルスで結膜炎になると、タオルについた目やにから感染することもあるそうです。家族に感染者が出たら、別々のタオルを用意しましょう。
「アデノウイルスに感染したら、とにかく熱が下がるのを待つしかありません」と渋谷先生。熱が高いと体力を消耗するし、食欲もなくなって心配ですが、水分補給を心がけ、少しずつでも栄養を摂って安静を心がけましょう。辛そうなときは解熱剤も上手に利用したいものです。
アデノウイルスに感染したかどうかは、病院で検査してもらえばすぐにわかります。熱の原因がはっきりすれば、ママ・パパは少し安心できるでしょう。ただし「回復までに時間がかかるのもアデノウイルスの特徴」(渋谷先生)ということですから、気長に看病するつもりでいた方が良さそうです。
のどの奥のぷつぷつはヘルパンギーナのしるし
ヘルパンギーナに感染した赤ちゃんの口の中をのぞくと、のどの奥にぷつぷつとした水疱のようなものが見えます。症状としては、高熱がでて、強いのどの痛みを伴います。
「特効薬はないもののいずれ治る病気です。気をつけるべきは脱水状態になること。赤ちゃんの場合は体が小さいので、必要な水分量を維持するためにはこまめに水分をとらなくてはなりません。水分補給はしっかりとしていただきたいです。もっとも、のどが痛いと赤ちゃんは、食事どころか、おっぱいやミルクさえ嫌がるかも知れませんね。そんな時には、鎮痛解熱剤を使って、のどの痛みが治まっている間に栄養や水分を与えるといいでしょう。離乳食が始まっている場合は、少しずつのみ込めるような、のどごしのいい食べ物も工夫して与えてください」(渋谷先生)
ヘルパンギーナも飛沫感染でうつります。また赤ちゃんの便の中にも病原体が潜んでいますので、おむつ替えの後の手洗いはしっかりとしたいですね。
手と足と口の中に発疹ができる手足口病
毎年、多くの子どもたちが感染する手足口病。この10年間でも、2000年、2003年、2011年、2013年と大流行がありました。原因となるウイルスの種類はヘルパンギーナに似ていますが、口の中の粘膜部分と手足の末端部分に水ぶくれのような発疹ができるのが特徴です。
「手足口病の病原体には、いろいろな種類があります。近年増えているコクサッキーウイルスA6型によるものは発疹がひどくて、治った後に爪がはがれることもあるほど強い症状がでます。ママ・パパなどにうつると、赤ちゃんよりも高い熱が出たり、発疹がひどくなることもあるようですから、感染しないように気をつけていただきたいです」(渋谷先生)
他の夏風邪と比べると、高熱はそれほど続きませんが、ヘルパンギーナと同じように、口腔内の発疹が痛むと、赤ちゃんが飲み物や食べ物を嫌がることもありますから、やはり食べさせ方、飲ませ方に工夫が必要です。