
――おなかの張りには「生理的なもの」と「病的なもの」の2種類があるとのことでしたが、それぞれの原因や対処法についてお聞きしたいのですが。
吉村先生:生理的なおなかの張りの原因は、動きすぎ、緊張、ストレス、からだの冷え、疲れ、便秘などがあります。こうした張りなら、無理をしないこと、なるべくストレスを避けること、からだを冷やさないことなど、日常の心がけで起こりにくくできます。対処法は安静にして休むことが基本です。
――病的なお腹の張りについてはどのような原因が考えられるのでしょうか?
吉村先生:妊娠初期〜中期に、脱落膜と絨毛膜の間に血液が溜まって血腫(絨毛膜下血腫:じゅうもうまくかけっしゅ)ができることがあります。多くは自然に吸収されますが、性器出血やおなかの張りを伴うことがあり、大きい血腫は流産のリスクが高まることもあるため、出血が続く場合は受診しましょう。なお出血があったとしても赤ちゃんの心拍がしっかり確認できれば、過度に心配する必要はありません。
――その他の「病的な原因」もありますか?
吉村先生:子宮筋腫とか子宮内膜症が代表的なものになります。昔は出産を終えた女性にみられたこれらの病気が、高齢妊娠の増加とともに妊娠がわかったときに見つかることも多くなってきましたが、こうした症状の場合も張りを感じることがあります。
――子宮筋腫や子宮内膜症でも妊娠を継続できるのでしょうか。
吉村先生:もちろんできます。そうした合併症は妊娠がわかったときにちゃんと診断されますから、心配はいりません。子宮筋腫の場合は、妊娠に伴って筋腫が変化することがあるので、筋腫の大きさや位置をこまめにチェックすることになります。子宮内膜症は妊娠で無月経が続くことで症状が改善することもありますが、どちらにしろ、おなかが張りやすいことを自覚して生活することは大切でしょう。
――そもそも、おなかの張りの原因が、生理的なものか、病的なものかプレママ本人が判断するのは難しいですよね。なにか基準はありますか?
吉村先生:出血がなければまず心配ないと考えて結構です。また、痛みの強さも目安になります。生理前の軽い痛み程度なら、安静にしておけばよいことが多いですが、本格的な生理痛に匹敵する痛みなら受診をおすすめします。また軽い痛みでも30分〜1時間以上続くようなら受診したほうが安心です。出血がある場合は必ず受診してください。切迫流産の可能性もあります。
ただ、初期のおなかの張りは神経質に考える必要はありません。筋腫があるといわれた方も、初期のころは1週間に1回とか2週間に1回病院に来るよう言われるので、しっかり診てもらっていれば心配はいらないでしょう。