――おなかの張りには「生理的な原因」と「なんらかの病気が原因」の2種類があるとのことでしたが、それぞれの原因や対処法についてお聞きしたいのですが。
吉村先生:生理的なおなかの張りの原因は、動きすぎ、緊張、ストレス、体の冷え、疲れ、便秘などがあります。つまり複合的な原因でおなかが張る可能性があるということです。ただ、こうした類の張りであれば、動きすぎないようにして、ストレスを避ける、からだを冷やさないようにするなど、ちょっとした心がけで起こりにくくすることもできます。対処法としては、安静にしてからだを休めること。これが一番ですね。
――病的な原因についてはいかがでしょうか?
吉村先生:たとえば「胎盤後血腫(たいばんこうけっしゅ)」。これは胎盤が形成される過程で血の塊ができる状態を言いますが、これも張りを引き起こします。胎盤後血腫は3か月ぐらいで自然になくなる事がほとんどですが、たまに出血することがあって、赤ちゃんになにか起きたのではないかと心配するプレママもいます。その場合は医師に診てもらいましょう。最近は妊娠6週で体長1cmの赤ちゃんでも心臓の拍動を見ることができますから、(もし出血したとしても)赤ちゃんが元気ならそれほど気にすることはありません。
――その他の病的な原因もございますか?
吉村先生:他には子宮の疾患ですね。以前もこちらの連載でお話した子宮筋腫とか子宮内膜症の場合です。昔は出産を終えた女性にみられたこれらの病気が、高齢妊娠の増加とともに妊娠が分かった時に見つかることも多くなってきましたが、こうした症状の場合も張りを感じることがあります。
――子宮筋腫や子宮内膜症でも妊娠を継続できるのでしょうか。
吉村先生:もちろんできます。そうした合併症は妊娠が分かった時にちゃんと診断されますから、心配はいりません。子宮筋腫の場合は、妊娠に伴って筋腫が変化することがあるので、筋腫の大きさや位置をこまめにチェックすることになります。子宮内膜症は妊娠で無月経が続くことで症状が改善することもありますが、どちらにしろ、おなかが張りやすいことを自覚して生活することは大切でしょう。
――そもそものお話として、おなかの張りの原因が、生理的なものか、病的なものかプレママ本人が判断するのは難しいですよね。なにか基準のようなものはないのでしょうか?
吉村先生:冒頭でもお話しましたが、症状として、出血がなければまず心配ないというふうに考えていただいて結構です。それ以外ですと、やはり痛みの強さ。個人差はあるかと思いますが、生理前の、もう明日頃から生理になるかも知れないなという程度であれば、安静にするくらいでいいかもしれません。しかし本格的な生理痛ぐらいの痛みを感じるのであれば病院に行ったほうがいいでしょう。また軽い痛みや違和感のようなものでも30分から1時間以上続くようであれば、病院に行ったほうがいいと思います。いずれにれせよ、出血があるなら必ず受診してください。これも以前お話しましたが、切迫流産などの可能性もありますから、出血がある場合はすぐに病院に行っていただきたいと思います。ただ、初期のおなかの張りは神経質に考える必要はありません。筋腫があるような方も、初期の頃は1週間に1回とか2週間に1回病院に来るよう言われるので、しっかり診てもらっていれば心配はいらないでしょう。